あしたの森ワークショップ1

ASHITA PROJECT ASHITA PROJECT

あした、南足柄へ。

あした、南足柄へ。

南足柄がつないだ「森」の魅力
日本と中国の学生の森林体験

あしたの森ワークショップレポート3

PHOTO & TEXT:あしたプロジェクト編集部

みんながしきりに見上げる杉の木。このあたりの杉は60年以上の年齢のもの。

日本には、山の力づよさ、驚異、荘厳さ、恐さを神格化して、崇拝してきた山岳信仰(さんがくしんこう)の歴史があります「山の機嫌をそこねる」という表現があるほど、まるで山が生きているかのように、話しをしてきました。大雄山に伝わる「天狗」の伝説もまた、そんな山岳信仰のひとつのようです。古くから人々は森に祈り、感謝し、共生してきました。きれいな森が、きれいな水を運び、川となって私たちの生活を介して、海に流れる。また、水蒸気となって雲になって、森にまた降り注ぐ。自然の美しい循環が森の植物、樹々、動物、虫を育てます。そんな風に思いを巡らせると、いつのまにか森に入るのが、とても楽しみになっているのに気づきます。

12月と1月の「あしたの森ワークショップ」は、中国から20数名の学生を招いての開催でした。日本でいうところの修学旅行のようなイベントのコースのひとつに、南足柄での森の体験ツアーを組んでいただきました。海外の若者が日本の森の体験を通じて、どんなことを思うのか、私たちも、林業家の方々も興味津々の中、ワークショップは開催されました。南足柄の林業家の杉山さんが、学生たちに向かって、ていねいに「日本の森の魅力」を伝えてくれます。あしたプロジェクトの一員でもある横浜国立大学の学生たちが、英語や中国語で、通訳をしてくれました。杉山さんの話によると、林業の文化も、古くは中国から伝わり、日本で独自に発展していったそうです(諸説あり)。ただ、のこぎりだけは日本独自の発明だと、杉山さんは話します。力をあまりかけずとも、きれいに、よく切れるよう日本人が考え出した道具です。その使い方の説明からワークショップははじまりました。

中国人のみんなにもわかりやすく説明する南足柄の林業家の杉山さん。

はじめて入る日本の森で、はじめて聞く森の話。みんなとてもたのしそう。

森に囲まれた中国の学生たちは、日本のみんなとおなじように楽しそうでした。景色を楽しんで、香りを楽しんで、杉山さんの話に、大きくうなずいていました。日本人とすこし違うのは、森に入ってすぐに友達と肩を並べて記念撮影をたくさんしていたり、お互いの写真を撮って楽しんでいたところです。森に入ること自体が珍しいのか、まるでテーマパークにでも来たかのようです。いままで手にしたことのない「のこぎり」を前でも、なんだかとても無邪気で楽しそう。そして、いざ間伐の時間になると、我先に、と、のこぎりを持って木に向かっていきました。どっちが先に枝を切れるか、中国の学生と日本の学生が競争をしていました。日本の学生の大半は、子どもの頃、図工の時間に習ったことがあると言いますが、中国の学生たちも、早々にのこぎりのコツをつかんで、いい勝負です。ゲーム性のある楽しみ方も、森をたのしむためのひとつのヒントのようです。

どの木を切れば、森が健康に明るくなっていくのか、みんなで考えます。

日本特有の道具「のこぎり」にみんな興味しんしんです。

比較的、都会に暮らすその中国の学生たちによると、自分たちの住むところから、こんなにきれいな森に行くには、ずっとずっと遠くまで行かないといけないとのこと。うらやましいという学生もいました。あんなに大きな中国という国での「遠く」が、どのくらい遠くなのか、想像はつきませんが、すくなくとも、日本のように、気軽に入れる距離にある森というのはあまりないのかもしれません。そんな話を聞くと、私たち日本人は多かれ少なかれ、森と共生しているというように感じることができます。都会に住んでいるとわからないこと。近くにあると、あたりまえに思えてしまって気づけない部分を気づかせてくれます。そして、言葉や文化、住むところの環境が違くても、「森が美しい」と思える気持ちは一緒だということにうれしくなります。美しいものは守りたいと思う気持ちは、人間なら一緒である。森だけではなく、水も空気もそう。そんなことを杉山さんからお話いただきました。

終始いろいろな角度でたくさんの記念撮影をする学生や先生たち。いい思い出として残りそうです。

昼食は、神奈川の味を楽しむためのお弁当です。

そのあとは、駅前の和み料理「きんとき」さんのお座敷を借りて昼食をとりながらの交流会です。1回目の交流会では、神奈川の農作物で作られたお弁当と、南足柄で獲れたみかんを。2回目はそれにくわえ、ワークショップ前に収穫してきた大根を、豚汁としていただきました。日本で食べる料理はどれもおいしいと聞き、またうれしくなります。食べたあとは、中国人の森に対する思いや、日本人との違いなどを話し合い、それぞれがそれぞれの国のあしたの森に向けて、どうしていくといいのか、なにができるのかなど、意識の交換をしました。言葉の壁はあれど、思う部分はわりと近いようです。午後は、最乗寺の観光です。中国にもお寺はたくさんあるけれど、こんな風に森と仏閣が一緒になったお寺は見たことがないと、みんなずっと興奮しているようでした。特に「天狗」は「モンスター」と言って、みんな笑っていました。中国にはいないのかな? 天狗。今度調べてみようと思います。

あしたの森ワークショップ1
あしたの森
ワークショップ3

2015年12月21日(月曜日)
2016年1月23日(土曜日)
会場:南足柄市大雄山内
参加者:24名・26名(主催・学生・林業家・ボランティア除く)
天気:晴れのちくもり・ときどき雪

 

海外からの学生を招いての「あしたの森ワークショップ」はすべてが新鮮。外国人の視点を通じて、私たちの視点も変わっていくような感覚でした。改めて、日本における森の魅力を感じたことはもちろん、大切に守っていかないといけないものなのだなと実感しました。森を前にすれば、文化の違いや、国と国同士の政治的な問題なんて、さほど大きな問題ではないように思えました。政治家もみんな森で会議をすればいいのに。

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